「期限の利益喪失条項」の重要性
取引基本契約書を締結する目的は?
一般的には次のような目的が挙げられています。
「大量反復的取引を継続的に行う場合に、個々の取引の都度、契約書を作成するという非効率を回避するため、事前に、当事者間で、個々の取引に共通に適用される基本となる事項を定めておく」
「企業間で反復継続して行われる商取引、とりわけ動産取引について共通的に適用される事項をまとめてあらかじめ定めておく」
(ながいですね・・・・)
これらの目的は確かにそのとおりなのですが、実務において、取引基本契約書を締結する目的は、実はもっと別のところにあります。
それは、「与信不安先に対して直ちに債権全額について繰上請求ができるようにする。」というものです。
取引基本契約書には、取引の相手方に与信不安が発生した場合には、繰上請求ができるとする「期限の利益喪失条項」が規定されています。
この規定がないと、仮に自社の取引先に与信不安が発生した場合でも、例えば期限未到来の手形しか持っていない状況であれば、他社が取立に走っている動きをただ指を加えて見ているしかなくなってしまうという危険性があります。
取引基本契約書を締結するメリットはほとんどこの一点にすぎないとまで言っている弁護士もいます。
取引先の与信不安に対応できるようになるという点で、取引基本契約書を締結することには大きな意味があると考えておくべきです。
以上の目的を鑑みれば、取引基本契約書の契約審査でまず優先的に見るべき事項は
(1)期限の利益喪失条項が入っていること
(2)契約解除の条項が「対等」な内容になっていること
(3)相殺条項が入っていること
ということになります。
もちろん、それ以外の条項でも、細かい契約審査が必要になりますが、取引基本契約書の審査においては「取引先の与信不安に対応できるか?」という大きな視点が必要になることをおさえておく必要があります。