2011-04-25 フリーキャッシュフローとは? ファイナンス ファイナンスの基礎を学ぶのに、非常に分かりやすく書かれていると評判の「ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)」を購入してみた。文庫本サイズで、ファイナンスの基礎理論について非常に分かりやすく書いており、特にフリーキャッシュフローの部分は分かりやすかったので、以下に引用します。 今回は、フリーキャッシュフローについて、ご説明しましょう。実は、フリーキャッシュフローの定義は、いくつかあります。簡単に計算できて、便利なフリーキャッシュフローは、キャッシュフロー計算書にある「営業活動によるキャッシュフロー」と、「投資活動によるキャッシュフロー」を足したものです。これから、ご説明するのは、事業価値を計算するときに、使うフリーキャッシュフローの定義です。簡便的に求めたフリーキャッシュフローとは、違いますから、ご注意ください。まずは、「フリー」とは何を意味するのでしょうか。これに関してはさまざまな考え方があるのですが、最もよく言われるのは、「投資家である株主や債権者が自由に使えるキャッシュ」という意味でのフリーです。また、「調達方法に影響を受けない」という意味でのフリーという考え方もあります。しかし、私が最もわかりやすいと思うのは、「企業が将来生み出すキャッシュフローから、事業を継続するにあたって、“ねばならない”キャッシュフローを差し引いたあとのキャッシュフロー」をフリーキャッシュフローとする考え方です。では、「“ねばならない”キャッシュフロー」とは何でしょうか。まず、あげられるのは「原材料費」です。これは、いやでも支払わねばならないものですよね。他には何があるでしょう。そうです、人件費です。それから、維持費、販売費、一般管理費です。実は、これらは、損益計算書を上の方から、順に見ていけばわかります。ここまでで、営業利益まできました。他に支払わねばならないものとして「税金」があります。それから設備資金、これは会社が成長していくためには、当然確保しておかねばなりません。あとは、オペレーション維持のための運転資金です。これらを、企業が将来生み出すキャッシュフローから、それぞれ引いたものが、フリーキャッシュフローなのです。ところが、私がこのような説明をすると、決まってこんなことをおっしゃる方がいます。「借入金の利息も“ねばならない”キャッシュフローではないか?」なかなか、鋭い質問です。でも、残念ながら、借入金の利息は、“ねばならない”キャッシュフローではありません。この理由を私は次のように説明します。フリーキャッシュフローは、あくまでも資金提供者である債権者と株主に、帰属するキャッシュフローです。債権者に帰属するキャッシュフローとは、まさに、「借入金の支払利息」のことです。言い換えれば、フリーキャッシュフローには、この債権者に帰属するキャッシュフロー(=支払利息)が含まれているのですと。こんな場面を想像してみてください。フリーキャッシュフローを目の前にして、債権者と株主が話し合っています。株主は、フリーキャッシュフローの中から、債権者の取り分である「借入金の利息」を債権者に渡し、残りは株主が自由に使うことができます。このフリーキャッシュフローの中から、支払利息を債権者に支払う、というのがポイントです。あるとき、債権者が株主に対してこんなことを言います。「今回は、事業も順調だったんだから、 少しは余分にくれたっていいでしょう?」――これに対して、株主はこう返します。「ダメだよ。あなたの取り分はあらかじめ契約で決まってるでしょ。業績がいいときも悪いときも確保されている。だから、そんな都合のいいこと言っちゃダメだよ」――そうです。債権者と株主の資金提供の方法には違いがあるのです。借入金がある企業にとっては、 確かに「借入金の利息」は、「ねばならない」キャッシュフローといえます。ただ、それはフリーキャッシュフローの中から、借入があれば、支払うものであって、フリーキャッシュフロー自体を計算する過程では、借入のあるなしの影響は受けないものなのです。