法務部リスク管理課

法務部リスク管理課に所属しながら、中小企業診断士としての活動を模索中。

契約書作成の素朴な疑問 「および・ならびに・かつ」

「および」と「ならびに」は、ともに二つ以上の物事(行為、状態など)を並べる場合に用いる用語で、日常用語としては同じ意味で使われています。しかし、契約書や法令で使用する場合には、厳密に使い分けがなされています。


すなわち、単純に二つの物事を並べる場合、「甲および乙」のように、「および」が用いられます。また、同じレベルの物事を三つ以上接続するときは、最後の接続の前にだけ「および」をつけ、他については「読点(コンマ)」でつなぎます。たとえば、「甲、乙および丙は・・・」となります。


「ならびに」は、接続される物事に段階がある場合に登場します。すなわち、接続の大きい方に「ならびに」を、小さい方に「および」を用います。たとえば、「甲社およびその従業員ならびに乙社およびその従業員は・・・」というように表現します。


接続される物事が三段階以上になる場合は、一番小さい段階だけに「および」を、その上の段階はすべて「ならびに」を用います。具体的には、下記の事例のようになります。

(例)「本件に関する通知は、甲の本店、東京支店および大阪支店ならびに甲の子会社ならびに乙の本店および名古屋支店のそれぞれに対して行なうものとする・・・」


内容がやや複雑となりますので、事例に沿って補足説明しますと、甲と乙は、その下に「小さな接続」を有していますから、同じレベルにある「大きな接続」ということになり、「ならびに」でつなぐことになります。また、甲および乙の傘下にある各店はレベルが一段下になりますから、「および」でつなぐことに疑問の余地はありません。残る問題は、「甲の子会社」の前にくる接続詞です。甲の子会社を甲の本店等と同じレベルだと認識する場合は、「甲の本店、東京支店、大阪支店および甲の子会社」という表現に変ります。しかし、甲の子会社は、甲とは別の法人格を有していますので、甲乙と同じレベルにあると捉えることもできます。この場合には、上記の事例のように、「ならびに」が用いられることになります。


「かつ」は、「その上に」「それとともに」という意味であり、二つの状態または動作を接続するだけではなく、それらを一体のものとして扱うことに意味がある場合に、「および」または「ならびに」に代えて用いられます。たとえば、「この条件は必要であり、かつ十分でもある」、「働きかつ学ぶ」というように用いられます。