法務部リスク管理課

法務部リスク管理課に所属しながら、中小企業診断士としての活動を模索中。

プッシュ戦略・プル戦略とは

プッシュ戦略・プル戦略とは、顧客に商品購入を促すためのアプローチを大別したもので、マーケティングの4PであるPlaceとPromotionと密接な関係があります。 プッシュ戦略・プル戦略の違いを意識することで、効果的なプロモーションが可能になります。それでは、プッシュ戦略・プル戦略について解説します。
プッシュ戦略とは、流通業者(小売店など)にメリットを提供することで自社商品の取り扱い強化や購入者への推奨をしてもらい、販売現場で購入を促すために「押す」戦略です。

具体的には、メーカーが卸業者や小売業者に対して資金援助(リベート)、販売支援や人的支援などを行い、小売業者が消費者に対して製品やサービスの優秀さを説き、購買を促す形をとります。

この戦略は、利益率・価格の高い商品や、顧客説明が必要となる商品、認知率が低い導入期(AIDMA参照)の商品に適しています。

例えば、家電量販店における電気製品販売のケースがあります。このケースでは、メーカー専用売場を設置し、説明要員もメーカーから派遣するなど顧客説明を徹底的に行ったり、メーカーからのリベートを原資としたポイント還元アップなど、強力なプッシュ戦略を取っています。

続いてプル戦略ですが、メーカーが消費者に対して直接的にアプローチし、購買意欲を喚起することによって指名買いさせる事を狙う、顧客を「引き込む」戦略です。

消費者へのアプローチは、主に広告やパブリシティなどが用いられます。広告では、商品の認知率を高めることはもちろん、理解を促して購入に結びつける事が重要になります。

この戦略は、使用頻度が高い商品、消耗品や、成熟期に達している商品など詳しい顧客説明が不要であり、販売現場コストをかけられない商品に多く用いられます。また、購入ブランドが決まっているようなブランドロイヤルティの高い製品にも用いられる手法です。

ここで留意しなければならないのは、プッシュ戦略とプル戦略はトレードオフの関係ではなく相互にサポートしあうということです。

プッシュ戦略重視だからといっても、広告を行わなければ、いくら有利な条件を提示しても小売店は企業の製品を積極的に取り扱わない可能性があります。製品の存在を全くしらないよりも知っている顧客の法が、説明しやすく購買にも結び付きやすいためです。

また、反対に広告を大量に行い製品の人気をあおっても、販促サポートを怠れば小売店は好条件な他メーカーの商品を優先して顧客に薦める可能性もあります。

従って、プル戦略とプッシュ戦略の最適な組み合わせ(シナリオ)を考えることが重要になります。

例えば、シャネルやカルティエのような高級品は、女性雑誌を中心とした広告に加えて、直営店での顧客囲い込みや、百貨店の外商支援などに経営資源を投じていますし、

ビールのような消費が多い商品も、広告の大量投下はもちろんのこと、店頭での棚の位置取りなど販売現場でのプッシュに余念はありません。

また、B2Bのビジネスでも、プル戦略とプッシュ戦略を組み合わせることができます。たとえば、専門誌に広告を出したり、記事にしてもらったりすることで、プル戦略を実施し、その後、コンタクトをとってきた人に、営業をかけたり、代理店営業といったプッシュ戦略につなげるといった方法です。

このように、プッシュ戦略とプル戦略の組み合わせは様々なケースが想定されますが、業界構造や商品特性、競合状況や自社の強み弱みなども踏まえた戦略作りが重要です。

皆さんも、ご自分の会社の活動や街中で見かける商品が、どのようなプッシュ戦略・プル戦略を取っているかを考えてみることで、実践的な感覚を身につけてみてはいかがでしょうか。