読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

法務部リスク管理課

法務部リスク管理課に所属しながら、中小企業診断士としての活動を模索中。

過去問 事例Ⅰ H25(まとめ)

<与件文>
業種 信販売小売業
事例テーマ 非正規社員の活用による成長戦略
強み(S) 広告宣伝のノウハウ
優秀な非正規社員の多いこと
 →2-1、2
外部リソースの活用
 →1-2
弱み(W) 次世代の新商品が登場していない
機会(O) 団塊ジュニア世代の健康ブーム
脅威(T) 大手通信業者の参入
   
 
<考察>
A社の特徴
外部
 
 
 
<設問&解答例>
第1問(設問1)
設問              
 
A社は、ここ数年で急速に事業を拡大させている。以下の設問に答えよ。

A社のこれまでの成長を支えた、健康食品の通信販事業を長期的に継続させていくために必要な施策として、新商品の企画や新規顧客を開拓していくこと以外に、どのような点に留意して事業を組み立てていくことが必要であるか。80 字以内で答えよ。
考え方(LEC)
 
A社がここ数年で急速に事業を拡大させたことを踏まえて、(設問1)では今後の通信販事業を「長期的」に「継続」させていくための施策が問われた。新商品企画・新規顧客開拓以外という制約条件があるうえ、80字しかないため、施策と留意点をコンパクトにまとめなければならない
考え方
(AAS)
 
設問の「成長を支えた」から、市場×製品の成長ベクトルと意識して、さらに「新商品企画や新規顧客の開拓以外」から既存商品×既存顧客のセグメントである「市場浸透戦略」が問われていることが読みとれる。よって、市場軸に対しては「既存顧客に関する機会へ対応する点」を、製品軸に対しては「既存商品を生み出しているA社の強みを発揮する点」という因果関係について、該当する与件情報を活用して解答例を作成している。 
解答例(LEC)
         

強みである宣伝広告のノウハウを駆使し、長期継続的な認知度向上に留意する。既存商品の改良や既存顧客の維持拡大を図るとともに、競合他社に先駆けた事業組立てが必要である。
解答例(AAS)
 
事業の組み立てには、①既存顧客の持つ美容や健康の維持・増進への関心に対応する点、②従業員が有する問い合わせ対応や宣伝広告等の蓄積したノウハウを活かす点に留意する。
解答例(TAC)
 
競合による類似商品の展開が予想される中、 現商品の改良や販売促進策の改善による既存顧客からの売り上げの維持・拡大を図り、確固たる収益基盤を確立することである。
自分の解答
組織面では、次世代を担う新卒活用と、オペレーターの人材育成をすること。人事面では、正規社員又は、非正規社員を問わず、透明性のある人事制度で士気向上を促すこと
出題の趣旨
A社の主力事業である健康食品の通信販事業を長期的に継続させていくための具体的施策について、現行の取扱商品や既存顧客との関係の点から、基本的理解力・分析力を問う問題である。
【考察】
制約条件である「新商品の企画や新規顧客を開拓していくこと以外」で、基本中の基本である、アンゾフのマトリックスを思い浮かべる必要があった。なぜなら、どの解答例も既存商品や既存顧客というキーワードを使っている。
また、設問要求は「長期的に継続するための施策」だから、”強み×機会”を書けばいい。こう考えると極めてオーソドックスな設問だった。
 
 
 
第1問(設問2)
設問
 
A社は、急速な事業拡大にもかかわらず、正規社員の数を大幅に増員せずに成長を実現してきた。今後もそうした体制を維持していく上で、どのような点に留意していくべきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ。
考え方(LEC)
 
正規社員の数を大幅に増員しない体制を維持する上での留意点について、「中小企業診断士として」の助言が求められた。解釈次第でさまざまな解答が考えられるが、設問構造や事例Ⅰの特徴から、組織構造や戦略レベルでの解答が求められていることを意識したい。いずれの設問も、ある程度の類推が求められることから、難易度も高く解答がバラつくことが予想される。ここでの対応が事例Ⅰの成否を決めるだろう。
考え方(AAS)                     
組織戦略レベルと位置付けることができるので、留意点として、組織構造だけをあげるのか、組織風土だけをあげるのか、それとも、組織構造と組織風土の2側面からあげるのかを意識しながら、設問の制約である「正規社員の数を大幅に増員せずに成長を実現してきた。」を踏まえた与件情報を特定する。与件からは、「正規社員の代わりに、X社などの外部の高い専門性を活用したこと。」と、「正規社員の代わりに、コールセンターのオペレーター業務の非正規社員を増員したこと」が読みとれる。この2つの与件を、(設問1)の機会と強みを支えるような組織戦略として整理すると、「①機会を支える組織構造」、「②強みを支える組織風土」という因果の組み合わせが最も妥当であると判断して解答例を作成している。
解答例
(LEC)

①少数の正規社員で管理可能な組織構造変革、②多数の非正規社員が主体的に活躍できる組織風土の醸成に留意する。そのために、企業の目的共有、教育や処遇で貢献意欲の向上、コミュニケーションの促進を図るべきである。
解答例(AAS)
 
留意点は、①製造委託先X社との連携強化により競合他社に先駆けて商品企画・開発できる組織構造の構築、②正規と非正規社員間のコミュニケーションの円滑化により全員で日々の業務をこなす組織風土の維持、である。
解答例(TAC)
サプリメントの通信販売業者としての競争優位性の維持・強化の観点から自社業務を見直 した上で、外注業者への委託業務についても A社がイニシアチブをとり、業務間の連結を 図ることで高付加価値化を図っていく
再現答案
注意すべき点は、売上規模の伸びに応じて増加している非正規社員の管理である。適切に採用と配置を行い、問い合わせに適切に対応できる人材の育成と、優秀な者への透明性のある評価制度の構築に留意すべきである。
   
   
出題の趣旨
 
急速な事業拡大を遂げてきたA社の効率的な経営管理体制を今後も維持していく上での留意すべき点について、基本的分析力、助言能力を問う問題である。
【考察】
まず、非正社員が多いことは、A社の強みであるか弱みであるかを判断する必要がある。「非正社員を有効活用して成長し、今後もその体制を維持して成長させたい」のだから、強みであると判断できる。チャンドラーの「組織の構造は戦略に従う」のとおり、A社の組織構造と戦略は一致しているといえる。
また、(設問1)との関係から、「既存市場×既存顧客」に対しての組織戦略を、①組織構造と②組織風土の切り口で書くが必要であった。
 
 
 
第2問(設問1)
設問
 
A社の従業員の大半を占める非正規社員の管理について、以下の設問に答えよ。
 
A社は、同業他社と比べて時給が多少高くても、勤務経験がある中高年層の主婦をオペレーターとして採用している。それには、どのような理由が考えられるか。 80 字以内で答えよ。
考え方(LEC)
A社の従業員の大半を占める非正規社員の管理についての問題である。(設問1)では、オペレーターの採用戦略について問われた。勤務経験がなぜ必要なのか、中高年層の主婦であることがA社にとってどのようなメリットがあるのか、等から考察したい。
考え方(AAS)     
(設問1)と(設問2)で共通しているテーマは「非正規社員の管理」であり、その究極の目的は「能力の向上」と「モラール(やる気)の向上」である。ここでは「理由」が問われている。よって、80 字の解答骨子を「理由は、①因果ため、②因果ため、である。」とした。
①「中高年層の主婦」⇒「既存顧客と同年代を採用した」⇒「顧客と直接対応する能力」
②「勤務経験者」⇒「売上規模の伸びに応じて増員した」⇒業務に即応できる能力」 
解答例(LEC)
理由は、①ターゲット顧客と同世代であり、効果的な対応が可能だから、②即戦力として活用できるため教育コスト等を削減でき、高い時給に見合ったメリットがあるからである。
解答例(AAS)
 
理由は、①中高年の主婦採用により同年代中心の顧客へ直接対応する能力を期待したから、②勤務経験者の採用により売上規模の急速な伸びに対応できる即戦力を求めたからである。
解答例(TAC)
A社の主要顧客である中高年層に対し効果的な商品提案が可能であると判断されたからである。また、多様な業務を任せることができ、育成・管理コストが節約できるからである。
自分の解答
A社の顧客層は中高年層であるため、同世代の中高年層の主婦が、問い合わせ対応することにより、顧客に安心感を与え、知名度で勝る大手メーカーと差別化をするため。
出題の趣旨
急速な事業拡大を遂げてきたA社の効率的な経営管理体制を今後も維持していく上での留意すべき点について、基本的分析力、助言能力を問う問題である。
 
【考察】
設問要求が、「勤務経験のある中高年層の主婦」なので、これに対応する解答が必要だった。逆の言い方をすると、勤務経験のない若年層ではダメな理由を書けばいい。AASのような考え方が妥当であろう。
 
 
 
第2問(設問2)
設問
 
A社のオペレーターの離職率は、同業他社と比べて低水準を保っている。今後、その水準を維持していくために、賃金制度以外に、どのような具体的施策を講じるべきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ。
考え方(LEC)
現状離職率が低水準にとどまっていることを踏まえ、今後もこの水準を維持するための具体的施策が問われた。賃金制度以外という制約条件から、何を発想したか、具体的にどこまで掘り下げたかで差がつくだろう。
考え方(AAS)              
(設問1)が「能力面2つ」で解答を作成したので、「モラール面2つ」を意識することになる。つまり、2つの能力について、それぞれモラールを高める助言を行うことになる。 まず、「中高年層の主婦」の低水準の離職率を維持するためには、「ワークライフバランス」がある。よって、解答例では、衛生要因となる「労像時間と休暇」の観点から柔軟に調整できる制度をあげることにした。次に「勤務経験者」の低水準の離職率を維持するためには、動機づけ要因となる「表彰制度や提案制度」など貢献意欲が高まる制度をあげることにした。 
「中高年層の主婦」の顧客対応力【分析】⇒衛生要因面からのモラール向上施策【助言】
「勤務経験者」の即戦力【分析】⇒動機づけ要因面からのモラール向上施策【助言】 
解答例(LEC)
能力やモラールの向上を図る施策を講じるべきである。具体的には、①新商品の企画提案制度を設け、継続的な動機付けを行う、②顧客対応や新規顧客開拓の実績等を適正評価し、能力に応じた権限の付与を行うことである。
解答例(AAS)
 
施策は、①家庭と仕事の調和を図るために労働時間や休暇が個人の生活にあうよう柔軟に調整できる制度、②人材の維持を図るために優秀オペレーターの表彰や職場改善につながる社内提案など労働意欲が高まる制度である。
解答例(TAC)
A社の業務についての十分な理解に基づく人材の採用を継続し、経験やスキルに応じた権限の付与など処遇面での改善を図るとともに、離職者へのヒアリングを実施して、その内容を人材採用や人材管理に活用していく。
自分の解答
オペレーターの仕事は外注しないことを説明し、仕事が無くなる不安を解消し、衛生要因を満たし、優秀なオペレーターに対してはリーダーに登用する等で職務充実を図り、動機づけ要因を満たして士気向上を促す。
出題の趣旨
A社が非正規社員を有効な戦力として活用する理由について、基本的理解力・分析力を問う問題である。
 
【考察】
人事戦略の最終的な目的は、「能力の向上」と「モラール(やる気)の向上」の2つに行きつく。賃金制度以外という制約条件があるので、賃金以外で、この2つについての制度を衛生要因とモチベーションに絡めて記述する必要があった。
 
 
 
第3問(15点)
設問
 
A社では、最近になって大学新卒の正規社員を採用し始めた。今後、中途採用しか行わなかった同社が新卒正規社員を採用するようになった理由として、どのようなことが考えられるか。80 字以内で答えよ。
考え方(LEC)
従来中途採用しか行わなかったA社が、なぜ大学新卒の正規社員採用を開始したのか、その理由の考察が求められている。戦略的視点から、新卒の活用法について考えることができれば、比較的対応しやすかった問題だろう。
考え方(AAS)              
中途採用=即戦力、大学新卒=即戦力になるための長期にわたる教育訓練が必要となる点である。大学新卒を採用することで、A社のあらゆる業務に対しての教育訓練が必要となる。中小企業の教育訓練はOJTが中心となり、先輩従業員がマンツーマンで教えることにもなる。当然、非正規社員が担当しているコールセンター業務についても非正規社員が講師役となり、大学新卒を教育することになる。このような新人教育過程を通じてA社の風土である「全員で日々の業務をこなす」という一体感を醸成できる点を、解答例であげている。 
解答例(LEC)
 
理由は、既存商品依存から脱却し、中長期的に新商品開発や新市場開拓を図るためである。市場競争が激化する中で、組織体制の強化により今後も業績拡大を継続するためである。
解答例(AAS)
 
理由は、①新卒採用を継続することで世代に応じた新商品企画・開発体制を構築するため、②OJTによる教育訓練過程を通じて全員で日々の業務をこなす一体感を醸成させるため。
解答例(TAC)
不透明性が高い経営環境下で意思決定ができる人材を中長期的に育成する必要があるが、それには業務全般の経験と理解が前提となり、新卒正社員のほうが適しているからである。。
自分の解答
次世代を担うような新商品の登場が経営課題であるため、新卒を採用することにより、アンチエイジング向けなどの商品展開を新しいアイディアを取り入れて事業拡大するため。
出題の趣旨
A社が大学新卒の正規社員に対して、どのような役割を期待していると考えられるかについて、分析力を問う問題である。
 
【考察】
即戦力として経験者の中高年を採用していることは第2問で解答した。新卒採用を始めることになったということは、経験者の中高年の非正社員ではできない、中長期的経営課題と絡めて解答する必要があった。
 
 
 
第4問(15点)
設問
 
A社では、ICTの専門業者に委託して構築した顧客データベースを活用している。
しかし、そこで得られた情報は、必ずしも新商品開発に直接結びついていない。そうし た状況が生じる理由について、80 字以内で答えよ。
考え方(LEC)
A社の顧客データベースが新商品開発に直接結びついていない理由が問われている。
「ICTの専門業者に委託して構築した」という点をヒントに、新商品開発に必要なのは何か、顧客接点から発想できれば対応は比較的容易だろう。ただし、事例Ⅱのような解答にならないように気をつけなければならない。
考え方(AAS)           
まず、「ITのお作法」を説明しておく。 
<お作法①設問をマクロで読む>
IT問題は手段であり、他の設問を支える関係となる。この点を意識することで、診断助言の関係を読みとり、答案の一貫性や整合性を図ることができる。
<お作法②設問をミクロで読む>
書くべき解答骨子は設問に従い、与件と設問の文言のみで表現する。この点を意識することで、一般論ではなく客観性の高い答案を作成することができる。
骨・関節サポート向けという健康の維持・増進から得られる現在の情報では、A社の既存顧客が持つ潜在的な「美容の維持・増進の関心」に対応した新商品開発を行うためには、必ずしも結びつくとはいえない点をあげることができる。また、中高年層のみから得られる現在の情報では、多くの企業が既に参入しているため、健康の維持・増進について関連する新商品開発を行っても、類似商品が既に市場に出回っている可能性がある点をあげている。
なお、別の思考として、中小企業白書の知識から、そもそも顧客データベースを導入する際に新商品開発を想定しなかったというハード面と、得られた情報をA社の社内で分析運用する人材が不足しているというソフト面からも答案を作成することができる。今回は、ITのお作法を重視した解答例を提示している。 
解答例(LEC)
理由は、①業者任せでデータベースを構築した為、新商品開発に必要な情報項目が網羅されていないから、②研究開発部門や情報活用を推進する人材が不足しているからである。
解答例(AAS)
 
理由は、①骨・関節サポート向けの情報のため美容に関する新商品に結びつかないから。②多くの企業が参入している中高年層の情報のため次世代への新商品に結びつかないから。
解答例(TAC)
外注化にあたり業者任せにした結果、顧客データベースが既存商品の販売実績の蓄積レベルに留まり、新商品開発に必要な情報を入手できるものとなっていない可能性がある。
自分の解答
顧客データーベースには顧客の現在又は過去の情報のみであり、顧客ニーズなどの情報が少なく、又はあってもそれを活用して新商品開発に活かせるシステムになっていないため
出題の趣旨
A社の顧客データベースが新商品開発に直接結びついていない原因がどこにあるのかについて、分析力を問う問題である。
【考察】
端的にいうと、このデーターベースは、新商品開発という面においては"使えない"システムであった。その理由は、①業者任せであったこと、②活用できる人材がいないことの切り口で書けばよい。
 
 
 
 
 
 
 
 
【出典】
過去問
 
解答用紙
 
解答例