法務部リスク管理課

法務部リスク管理課に所属しながら、中小企業診断士としての活動を模索中。

経済学 H20 第12問

【問題】-------------------------------
 原油価格の高騰が起きれば、ガソリンスタンドはガソリン価格の引き上げを余儀なくされる。一方で、ガソリン価格の高騰は買い控えなどによる顧客離れを引き起こしかねない。そこで、ガソリンスタンドでは価格をどのような水準に設定するかが重要となる。この点を踏まえて、下記の設問に答えよ。

(設問1)
 ドル建ての原油価格が上昇しても、ガソリンの円建ての小売価格への影響を小さくする要因の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 

a 円高
b 円安
c 低い需要の価格弾力性
d 高い需要の価格弾力性

[解答群]
ア aとc 
イ aとd 
ウ bとc 
エ bとd

(設問2)
 あるガソリンスタンドが、周りの競合店よりも極端に低い価格を付け、競合店を市場から排除した後に独占的な地位を得ようとする可能性が指摘できる。このような価格戦略を表す言葉として最も適切なものはどれか。

[解答群]
ア 限界価格設定
イ フルコスト・プライシング
ウ ラムゼイ価格
エ 略奪的価格設定

【解答】-------------------------------

正解:(設問1)イ(設問2)エ



 ミクロ経済学から、需要の価格弾力性と為替レート、価格戦略に関する問題です。
 早速、設問1 から見ていきましょう。
 設問1 は、需要の価格弾力性と為替レートを組み合わせた問題です。
 為替レートについては、基礎的な知識で正解できます。一方、需要の価格弾力性については、基礎的な知識で解けますが、慌てて解答すると引っかかりやすい問題になっています。
 まず、為替レートの方から見ていきましょう。

 為替レートの影響を具体例で考えてみます。
 最初に、為替レートが1 ドル100 円だったとします。ここで、原油価格が1 バレルあたり100 ドルの場合は、輸入した原油の円建ての価格は、1 バレルあたり10,000 円(=100ドル×100 円)となります。次に、原油価格が上昇し、1 バレルあたり120 ドルになったとします。この場合、輸入した原油の円建ての価格は、1 バレルあたり12,000 円(=120ドル×100 円)となります。

 次に、為替レートが円高になり、1 ドル90 円になった場合を考えます。先ほどのように原油価格が上昇し、1 バレルあたり120 ドルになったとします。このとき、輸入した原油の円建ての価格は、1 バレルあたり10,800 円(=120 ドル×90 円)となります。

 すると、円高になった場合の円建ての価格(1 バレルあたり10,800 円)の方が、元の価
格(1 バレルあたり12,000 円)よりも低くなっています。そのため、ドル建ての原油価格
が上昇した場合でも、円高になればガソリンの円建ての小売価格への影響は小さくなると
言えます。

 よって、選択肢のa、bの比較では、aの方が正解になります。

 次に、需要の価格弾力性の方を考えましょう。

 まず、簡単に需要の価格弾力性を復習しておきます。
 需要の価格弾力性は、価格を1%上昇させた時に、需要量が何%変化するかを表しています。需要の価格弾力性は、財・サービスの種類によって異なります。値上げした時に需要が大きく減る(売れなくなる)ようであれば「需要の価格弾力性が高い」と言えます。逆に、値上げした時に需要があまり減らないようであれば「需要の価格弾力性が低い」と言えます。
 では、問題を見てみましょう。

 この問題は、ガソリンスタンドの立場で考えることがポイントです。
 まず、ガソリンが「c 低い需要の価格弾力性」だった場合を考えてみましょう。
 価格弾力性が低い場合、小売価格を上げても、需要量はあまり変わりません。そのため、原油価格が上昇し、ガソリン仕入値が上昇すれば、ガソリンスタンドは、その分をガソリンの小売価格に転嫁し、値上げすることが考えられます。
 次に、ガソリンが「d 高い需要の価格弾力性」だった場合を考えてみましょう。
 この場合は、小売価格を上げると需要が大きく減ります。そのため、原油価格が上昇し、ガソリン仕入値が上昇したとしても、ガソリンスタンドは、ガソリンの小売価格を大きく値上げすることをためらうと考えられます。
よって、選択肢のc、dの比較では、dの方が正解になります。

 以上より、設問1 はaとdが適切であり、イが正解となります。

 続いて、設問2 を見ていきましょう。
 設問2 は、価格戦略に関する問題です。選択肢には聞き慣れない語句が含まれていますが、設問文の内容から判断することも可能な問題です。
 順番に記述を見ていきましょう。

 選択肢アの「限界価格設定」とは、限界費用に基づいて価格設定を行うことです。よって、アの選択肢は不適切です。
 選択肢イの「フルコスト・プライシング」とは、価格の設定において、全ての費用を回収できるような水準に設定することです。よって、イの記述は不適切です。
 選択肢ウの「ラムゼイ価格」とは、企業の利潤がゼロとなる、すなわち収入と費用が等しくなる条件のもとで、総余剰を最大化するような価格設定を行うことです。よって、ウの記述は不適切です。
 選択肢エの「略奪的価格設定」とは、一定期間ライバルよりも極端に低い価格を付け、ライバルを市場から排除した後に独占的な地位を得ようとする価格設定です。よって、エの記述は適切であり、これが正解となります。

 需要の価格弾力性は重要ですので、しっかり復習しておきましょう。

◆復習するには
需要の価格弾力性
→ テキスト「5-1 消費者行動と需要曲線」価格弾力性