法務部リスク管理課

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会計基準来年からこう変わる(1)M&A――のれん代、複数年で償却

以下のサイトから引用

会計基準来年からこう変わる(1)M&A――のれん代、複数年で償却(日経新聞2005/12/16)


企業の合併・買収(M&A)に絡む企業結合会計やストックオプション(株式購入権)の費用計上など、新しい会計基準の導入が二〇〇六年に相次ぐ。来年から適用される主な会計基準のポイントと企業収益への影響を探る。
 「業績が好調な今期中に償却を済ませておきたい」――。十一月中旬、二〇〇五年九月期中間決算発表の会見で、クレディセゾンの前川輝之副社長は、〇六年三月期にユーシー(UC)カードのカード事業会社を買収することに伴うのれん代を一括償却する理由をこう説明した。合併で発生するのれん代の償却費二百四十億円を今期の特別損失に計上する。
 〇七年三月期以降は、企業買収で生じるのれん代の一括処理はできなくなる。企業結合会計基準の適用が始まるためだ。この新基準では、のれん代を単年度で一括償却し特別損失で計上することを原則禁止するルールが盛り込まれた。
 企業を買収するのに、被買収企業の成長力やブランド力の価値を示すのがのれん代。のれん代の新ルール導入に際して、企業買収に意欲的な新興企業からは長年にわたって収益を圧迫すると、反対意見が続出した。企業会計基準委員会は、将来にわたって利益の上積みが見込めるのに一気に損失処理するのは理屈に合わない、と一括償却を退ける結論を出した。
 企業結合会計では、被買収企業が業績に貢献する年数などからのれん代の寿命を見極め、二十年以内の期間で定額償却する。複数年で均等に分け販管費に費用計上することで、「買収コストに対してどれだけ利益が出ているか明確になり、投資家が買収の成否を判断できるようになる」(企業会計基準委員会の布施伸章・専門研究員)。
 のれん代の処理が注目を集めるのは、今後はM&Aをする際は新基準の適用で、のれん代の計上が避けられなくなるからだ。M&Aに絡む会計基準が整備されていなかった従来は、合併する企業同士の貸借対照表(バランスシート)を、そのまま合体する会計処理も認められた。この場合は、のれん代などは発生せず償却費も出てこない。
 新基準では、こうした簿価のまま資産や負債を合算する会計処理を採用するには、非常に厳しい条件を満たさなければならない。実質的にのれん代を計上する方式しか認められなくなる。会社側が対等合併と言い張っても、会計上は「買う企業」と「買われる企業」を決め、買われる企業の資産・負債を時価評価して純資産を算出し、買収金額との差額をのれん代として計上し償却していかなければならない。
 企業再編に関連した会計ルールが整備されたことで、企業買収などのどさくさに紛れ、保有資産の含み損益を処理する恣意(しい)的な会計処理の道も封じられる。例えば、グループの内部取引については消去する処理に統一するため、これまでのように子会社同士を合併させ資産を評価替えし、親会社の連結期間損益に表面化させないで含み損を消す処理はできなくなる。