法務部リスク管理課

法務部リスク管理課に所属しながら、中小企業診断士としての活動を模索中。

努力目標付きの契約書

法律用語で
  best effort
  reasonable effort
  commercially reasonable effort

の違いは責任の重さから

 best effort > reasonable effort > commercially reasonable efforts

という順で受けとられる。


説明

Best efforts とは従業者を含む会社が可能な全ての手段用いて努力することである。Reasonable efforts とはbest effort より低い基準でかつ主観的な基準となる。さらに低い基準としてcommercially reasonable efforts という用語が使われる。"best effort"や"(commercially)reasonable effort"といった用語は本質的に曖昧なものだが契約書になるとこれらの用語は単なる努力目標ではなく法的拘束力を持つ。

Best effort と契約書にある場合は、最大限の努力をしなかった場合には責任を負わなければならない。トラブルになった場合、best efforts の有無を争うことができる。

日本における最大限の努力とは意味合いが異なるため、これらの用語の使い分けには注意を払う必要がある。日本企業が海外企業からの導入品の開発又は販売で "best effort" を尽くさなかったと言うだけの理由で賠償請求訴訟を起こされたとの話もある。

"commercially reasonable effort"は、『同程度の市場性を持った自社品に注力する努力と同程度の努力』と定義されることが多く契約上はこちらの方が記される場合が多い。


日本語の契約書でも近年、「合理的な努力をする」「最大限の努力をする」といったいわゆる努力条項が入れられるようになったが、米国のM&A契約書でも”best effort”や”(commercially) reasonable effort”といった言葉を用いて、当事者の努力レベルを規定するのが通常。

これらの用語の具体的な意味については、理論的には州ごと、国ごとに異なると言えるだろう。(Antitrust関連紛争に関してこれらの用語の解釈が問題となった事案が少ないため、明確な解釈基準は存在しないが)一般的には、”reasonable effort”と言う場合、当局の詳細調査(Second Request)に対応する義務まで含まれ、”best effort”と言った場合には更に進んで訴訟対応まで含まれると考えてよいと思う。

すなわち、訴訟対応までやってなお是正措置を要求された場合に初めて解除権を行使できる可能性が出てくるということになる。